こんにちは!革と帆布のかばん専門店 香久山鞄店スタッフの よちこ です。

革製品を使うときの悩みのタネの1つが、水ぬれに関する失敗です。ぬれたことに気がついてから拭き取ってみても、革によっては水ぶくれができてしまった、なんてこともあったりして。

もちろん防水スプレー撥水性が保てるクリームなどを使ってしっかり防水ケアをしていただくのが一番ですが、水ぶくれになってしまってからでは、もう手遅れ。少なくとも元の状態に戻すことは出来ないと言われています。だが、本当にそうなのだろうか。なにか打つ手はないのか。

水ぬれペンケース

革が水にぬれた!こんなときどうする?

革製品が水にぬれてしまったら、どうしたらいいのでしょうか?今回の鞄コラムでは、そんな革のお悩みについて一般的に言われている対処方法が正しいのかどうか、その効果のほどを検証してみました。もしかしたら、この検証によって、多くの革の水ぬれ事案に関する苦しみ、悲しみを解決できるかもしれません。

革が水にぬれたら、水にぬらせ。は本当なのか?

バッグ

革が水にぬれたら、もういちど水にぬらせ。

これは以前からまことしやかに噂されている都市伝説的対処法です。水でできたシミだから、もっと大きなシミにしてしまえば大丈夫。という理屈ですが、はたしてこれをなんの疑いもなく実践できる人がどれだけいるだろうか。ひどくなったらどうしよう、とビビって尻込みしまう人が大半ではないでしょうか。かくいう私もその一人であります。

「ピーキーすぎてお前にゃ無理だよ!」

と言われたって、やってみないとわかりません。6年ほど使用したヌメ革のボディバッグのサンプルがあったので、これを水没させて実際に水にぬれた状態を再現してみたいと思います。

革のボディバッグ、6年目の水没。

水をたたえたバケツの中に突っ込んでみました!ドボン! なんというか、かなりの罪悪感です。すまんすまん、君の犠牲はムダにはしない。っていうか、濡れてしまってもなんとかしてやるから!

革がぬれたので、乾かす。

しっかりと境目が出来ました。ここからさらに3日間ほど、自然乾燥させて、水ぬれ→乾き という最悪の事態を再現させてみたいと思います。いったい私は何をやっているんだろうという気がしますが、今日の作業はここまで。

地獄を見れば心が乾く。3日間ほど自然乾燥させました。

さて、3日前に水にぬらした革のボディバッグを自然乾燥させたら、こんなになっちゃいました! ほれぼれするほどに完璧なウォーターライン! 革好きにとっては、これは地獄に等しい光景ではないだろうか。寡聞にして地獄がどんなところかは知りませんが、乾いた革をぼんやり見ていると、心が乾きます。コーヒーも苦いです。

もう一度、水にぬらしてみました。

さーいよいよクライマックス。一度ぬれて乾いた後の水シミ。もう一度、水にぬらすことで消すことができるのか、あるいは、もう1つのホライズンができてしまうのだろうか。

布巾をぬらして、ウォー

革をぬらす……ター。

ずぶぬれという言葉がふさわしい。

バッグを水没させると、また余計な染みができるかもしれないので、水にぬらした布巾で丁寧に革をぬらす、を繰り返しました。でも一体どこまでぬらせばいいのだろうか。正直、この作業中にコメントを求められていたら、「どちらかといえば、今はちょっとだけ絶望寄りです。」と答えていたと思う。

左腕にサイコガンを持つ不死身の男

半乾きの革にクリームを塗る。

すっかりずぶぬれとなったボディバッグ、ここからしばらく乾かします。完全に乾かすとシミが再発、どころか勢力範囲を拡大するのは明白なので半乾きが鉄則です。水気は感じないが、手の甲がひんやりするくらいのところで革用クリームを塗ってみました。

今回塗ったのはブリオクリーム。

何を塗ろうか迷いましたが、水分が多く含まれている状態だと判断し、油性のギトギトしたワックスよりもなるべくサラッとしたクリームのほうが乳化(水分と油分が混ざること)が進むのではとの仮説を立て、ブリオクリームを使ってみました。

ウェスも使ってクリームをしっかり塗り込みます。

が、すこし乾かしすぎだのだろうか。ちょっとダメそうな気がする。どうもクリームを塗っただけではスンナリとは消えてくれない雰囲気なので、とっておきの奥の手を出すことにしました。

手でもむだけで、革の水シミが消える? エーッ本当に?

ちょっと、革もみますよ。

革を手でもんでみたら、もしかしたら、どうにかなるんではないだろうか。これは革の繊維内部にクリームを浸透させつつ、革繊維に含んだ水分と油分とを結合させるという発想です。

実際、これでどうにかなってしまいます。

ホレご覧のとおり、すっかりわからなくなりました!

結論:革が水にぬれてシミになったら、もう一度ぬらして革クリーム塗って、手でもむと不思議と消える。

水にぬらす場合、小さな物だと丸ごといけるかもしれませんが、バッグの場合は現実的ではないので部分的にぬらす方法を試してみました。その結果、ぬらすだけでは不十分。シミが残る可能性があります。今回の検証ではクリーム塗って、仕上げに手でもむことによって、大幅な回復が認められました。ただしこの方法は、対象物を手で揉むことができる構造であることが条件となります。また革を揉むことでシボ目ができるので、余分なシワを作りたくない場合には別の方法が必要です。

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