鞄コラム

2018/06/26 | 帆布と書いて、はんぷと読みます。

こんにちは。香久山鞄店の担当です。今回は当店で革と双璧をなす人気の素材、帆布について語ってみたいと思います。

まず読み方でつまずく帆布。

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帆布と書いて、はんぷと読みます。


今回のコラムでいちばん重要といってもいいことなので、もう一度いいますよ、読み方は「はんぷ」です。なかなか正確に読んでいただけることが少ない字です。PCでも変換されたことはないね。ぶっちゃけマイナーワードですよ。


お客様からも時々「ほふ?」とか「ほぬの?」って呼ばれることがあります。


なので電話口で聞いたときなんかは「ええ、○○はんぷですね」ってな感じで、なるべく自然に、そしてできるだけさり気なく合いの手を入れるなどで、当店としては帆布の認知・普及に日々努めているのであります。


帆布という単語、業界用語という出自であるがゆえか、いささか不遇な扱いを受けているのではないでしょうか。ここはひとつ全国帆布普及連盟(略して全帆連)なる怪団体を立ち上げ、フハッとばかりに鼻息も荒く、帆布製品の地位向上を目指したいところです。


立てよ帆布!なびけよ帆布!

ひるがえる旗はもちろん帆布製だ!

帆布は、船の帆でした。

さて、この帆布という単語には「帆」という字が当てられていますが、その文字が表すとおり、かつては船の帆に使われていました。その歴史は古く、エジプト時代の亜麻布にまでさかのぼるといわれています。


帆船にとって帆は動力であり、いわば生命線とも言える存在でした。板子一枚下は地獄という言葉のとおり、船乗りの世界は、毎日が生きるか死ぬかの過酷な環境です。いざってときに肝心の帆が破れたんじゃ、しゃれになりません。文字通り生死に関わる問題となりえます。

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危機感が微塵も感じられないイラスト。串に刺さったおでんの具ではない。


帆布が登場するまでは、綿布を数枚かつなぎ合わせたもの、あるいは藁で編んだムシロを用いるなどを使っていたようです。これらは耐久性の面では、だいぶ危うさがありそうな代物でした。そりゃそうだよ、だってムシロだもん。


とまぁ、そんなこんなで水に強くて、耐久性のある帆布があったらいいのになー、そうだったらいいのになー。当時の日本中の船乗りたちが常々、そう思っておりましたところ!


江戸時代の海運実業家であり発明家でもあった「工楽 松右衛門」という人がたいへんカッキテキな発明をいたします。

しびれるし、あこがれる。

時は天明5年、江戸時代も後期にさしかかったあたり。海運業を営んでいた松右衛門は従来の破損しやすい脆弱な帆に代わって独自の工夫をこらした帆布を発明し、「松右衛門帆」として広く全国的に普及させたのです。


帆布の製法・運用は当時すでに存在していたのですが、「松右衛門帆」は、帆として使うための様々な工夫をこらしており、従来の平織り帆布よりも耐久性、運用性を飛躍的に向上させたものでした。


つまり「松右衛門帆」は日本における帆布の起源とは言えないのですが、帆の発明としては、エポックメイキングな出来事であったと言えます。


松右衛門のすごいところは、本来なら秘中の秘であるはずの「松右衛門帆」の製法を独り占めすることなく、よかったらお使いくださいとばかりにすべてを公開し、日本中に広く普及させた点にあります。以後、日本の海運は大きく発展を遂げていきます。


さすが松右衛門さん、俺たちがやれないことを平然とやってのける!


一介の名もなき船頭から廻船問屋の豪商となり、当時の日本の海運事業を大きく躍進させた松右衛門、当時数えで43歳でありました。ってことは今の自分と同じ年齢ってことですか。


俺もまだまだだなーって思いましたよ。明日はもうちょっとだけがんばろう。