鞄コラム

2018/12/08 | 鞄ができるまで(鞄作り編その2)

こんにちは、革と帆布のかばん専門店 香久山鞄店スタッフのよちこです。


鞄ができるまで、いよいよ鞄作りの山場、仕上げ・縫製の工程となります。どうにか今回でまとめたいところであります。


「さぁ、いっちょうブワーッといくか!」


革包丁。青紙1号、2号とか、青紙スーパーって何?

鞄作りの道具たち

ダレスバッグの形になってまいりました。ややダレス(ダレス度30%)です。硬い革を重ねていくと、ひずみやズレも生じるため、革包丁を使ってコバを削って整えます。


切れ味が鋭く、分厚い革も一刀両断、独特かつアシンメトリックな形状の革包丁。包丁というからには、きっと料理の包丁から分派したんじゃなかろうか。包丁一本、サラシに巻いたら月の法善寺横町であります。古すぎてスミマセン。


さてこの革包丁を買おうとすると、白紙、青紙1号、2号とか、青紙スーパーとか聞き覚えのない言葉がセットになっております。こちらは刃に使われている鋼のランクを示しております。刃が青かったり白かったりするわけではありません。寿司で言ったら、並、上、特上。だいたいそんな感じですが、寿司とちがって高けりゃいいというわけではないのであります。


たとえば青紙スーパーあたりなどになりますと、通常の鋼よりも炭素(C)の含有量が高いのと、タングステン(W)やクロム(Cr)などに加えてモリブデン(M)とバナジウム(V)が入っています。モリブデンを加えることで粘りが生まれ、切れ味が持続します。バナジウムを加えることで硬くなり、耐摩擦力に優れた特性が備わります。おいおい、これはまさに刃物のために生まれた特殊鋼じゃないか。(実際そうです)


つまり青紙スーパーを使って作れば、さほど研がずに使い続けることができるうえ、硬くて粘りがあるので研いでも研いでも刃が減らない、そんな夢のような革包丁ができあがるってわけでございます。


切れ味良くて、硬くて鋭い。その切れ味は、永久不滅の無限刃!特売!!この言葉に、これまで何万人のクラフトマンが泣かされたことか。


切れ味がながく続く、硬くて鋭い、包丁の刃が減らないということは裏を返せば、刃欠け・ナマクラになろうものなら、とたんにツノ牛になるということであります。こうなってしまうと研いでも研いでもなかなか刃ができやしない。とりわけ革包丁は購入後に研ぐ前提で作られているため、後で知って地獄を見ることになります。それがむしろご褒美に感じるという向きの方も、一部におられるかとは思います。


豆鉋でコバを鉋掛け。かつおぶしだよ人生は。

鉋掛け

鞄作りでは、「コバ」と呼ばれる革の断面部分に「鉋掛け(かんながけ)」が施されます。かんなといえば大工さんの道具ですが、鞄作りで使う豆鉋は手のひらに収まるほどミニチュアサイズのなんとも可愛いやつです。


鉋掛けで大切なのは指先の絶妙な抑さえの感覚と力加減、そしていちばん大事なのは刃の調整です。これはかつおぶし削り器の使い方に通じるものがありそうです。ところで結婚祝いにいただいた我が家のかつおぶし削り器は、湿気が多い土地柄か、すっかりカビてしまいました。「いけないなァ カビのことを悪く言っては」


革鞄を手縫いする。

鞄、手縫い

ダレスバッグのなかでも最も負担のかかる口金の部分は、伝統的な、「二本針」という手法で縫い上げられます。といっても針で革に穴を開けるのではなくて、「菱錐(ひしきり)」と呼ばれる道具で糸を通す箇所に穴を開け、太い針と糸でしっかりと縫い上げます。これにて鞄作り7つ道具、全て揃いました。


鞄、手縫い

手縫いでミシンで縫ったような整然とした糸目を出すのは並大抵のことではありません。たとえば糸を通す穴を開けるときなんか、菱目打ちでガッツンと革を貫通させるイメージがありますが、実際にはせいぜいアタリだけを入れる程度。菱錐で「ちょっとだけでごめんね」という感じでブスリと開けるぐらいです。こうして穴の広がりを最小限に留めると、ステッチがきれいに見えたりいたします。


おしまい

革の鞣しから仕上げ加工、縫製・組み立てにいたる「鞄ができるまで」を追っかけてまいりましたが、いかがでしたでしょうか。鞄作りは何人もの職人さんの手によって作られていきます。どんなふうに作られているのかを知っていただくことで、長く大切に使っていただけるとウレシイのであります。


以上、お楽しみはここまでだ!

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