皆さま、こんにちは。鞄工房山本moriです。
今回は鹿革小物の気になる「お手入れ」についての続編。
前回は「素仕上げの鹿革」と「顔料仕上げの鹿革」、店頭サンプル品の「名刺入れ(素仕上げ)」を使用して、それぞれにお手入れ用クリームやワックスを塗るとどうなるかという検証を行いました。
検証途中の2日目までしかご報告できていませんでしたので、今回はその続きをご報告したいと思います。では、さっそく見ていきましょう。
検証<7日目>
あっという間に1週間後。さて、どうなったでしょう?
素仕上げの鹿革
1週間経過すると、なかなか変化が見られなかった鹿革専用ワックス「Wax of the DeerSkin」についに変化が!
乾きの早かったヌメ革クリームのシミが薄くなっているのかと思いきや、唯一、鹿革専用ワックス「Wax of the DeerSkin」が目立たなくなりました。
よく分かるよう、アップも撮影!
1週間かかりましたが、あんなにシミになっていたのに、ほとんど乾いてシミも目立ちません。
ヌメ革クリームも頑張りましたが、2日目以降はさほど変化なし。
少し分かりづらいかもしれませんが、ラナパーもかなり乾いています。
その他は多少薄くなったものの、跡がくっきり。
鹿革専用ワックス「Wax of the DeerSkin」が乾いたので、よく似た液体のレザープロテクションクリームも変化があるのではと期待しましたが、こちらは残念ながら変化なしでした。
顔料仕上げの鹿革
素仕上げの鹿革とは対象的に、鹿革専用ワックス「Wax of the DeerSkin」以外のクリームやオイルを塗った箇所は全く目立たなくなりました。
素仕上げと同じく、アップも撮影してみました。
真ん中の鹿革専用ワックス「Wax of the DeerSkin」を塗った箇所も乾いてはいますが、その部分だけ色が少し濃くテカリも出て、つるっとした質感に変化しました。
店頭サンプル品の名刺入れ(素仕上げ)
こちらは2日目で綺麗に乾いていたので、特に大きな変化はなし。
2日目以降、やはり鹿革のもっちり柔らかな質感は感じられず、薄い膜が張ったような、ほんの少しつるっとした印象です。
水濡れするとどうなる???
素仕上げの鹿革の場合、鹿革専用ワックス「Wax of the DeerSkin」であればシミにならない事が分かったので、さらに、ワックスを塗った箇所が水で濡れてしまった場合はどうなるのか、検証に使用した名刺入れを水で濡らして様子を観察してみました。
まずは、水滴を落としてみます。
すぐに拭き取りましたが、もうしっかりと水分を吸い込んでしまったよう。。。
水が滲んで濃いシミになってしまいました。
<10分後>
不安なシミができてしまいましたが、10分経過すると…
かなり乾いてきました!!
特に左側、黄金色の名刺入れの水濡れはほとんど気になりません!
<30分後>
ほぼ乾いていますが、よく見ると右側の赤銅色にはまだ水の跡が。もう少し様子を見てみましょう。
<1時間後>
水滴を落としてすぐは濃いシミになりましたが、1時間でどちらもしっかりと乾きました!
実際には目を凝らさないと分からないほどの、うっすらとした水の跡が右側の赤銅色には残っているのですが、画像でも分からないほど、ほとんど気になりません。
検証結果
<素仕上げの鹿革>
デリケートな素仕上げの鹿革の場合、柔らかでもっちりとした鹿革の触り心地や風合いが損なわれてしまう可能性があるため、当社ではお手入れ用のクリームやワックスの使用は推奨しておりませんが、どうしても汚れや傷、色落ちが気になる方にあえてお手入れ用品をご紹介するならば、今回検証で使用した6種のお手入れクリームやワックスの内、鹿革専用ワックス「Wax of the DeerSkin」が唯一お勧めできそうなアイテムであることが分かりました。
部分的に塗っても時間をかければ目立たなくなりましたが、今回検証に使用した名刺入れのように全体に均一に塗り拡げることで塗りムラも気にならなくなります。
ただし、柔らかな質感は損なわれること、若干お色も濃くなる可能性があることをお忘れなく!
また、ワックスを塗るときは見えない箇所などで試し、直接ワックスを吹き付けないように注意してくださいね。
★商品ページはこちらから 鹿革専用ワックス「Wax of the DeerSkin」
ちなみに、色の濃淡によって多少の差がありましたが、今回検証で使用した名刺入れは鹿革専用ワックス「Wax of the DeerSkin」を使用することで、水濡れした場合でもすぐに乾拭きすれば1時間ほどで乾き、水濡れによるシミも全くない、または、目立ちにくいということがわかりました。
ただし、下の画像のように、染色していない素仕上げの鹿革ではシミになってしまいましたので、当社の鹿革商品で染色していない「生成り」と「月白」はシミになる可能性が高いと思われます。
<素仕上げの鹿革(水滴を拭き取った直後)>
水滴を落としてすぐに水を拭き取りましたが、レザープロテクションクリームを塗った箇所以外はシミになってしまいました。
(お手入れクリームを塗っていない、付箋のない箇所にも水滴を落としてみました。)
<素仕上げの鹿革(1時間後)>
かなり乾いて薄くなりましたが、やはり、レザープロテクションクリームを塗った箇所以外は水濡れのシミが残ったまま。翌日以降も様子を観察しましたが、シミが消えることはありませんでした。
以上、素仕上げの鹿革の検証結果でした。
汚れや傷は気になるけれど、ご自身でお手入れするのが不安という方には防汚移染処理(素仕上げの製品の表面にコーティングを施す処理方法)をした商品もご用意しておりますので、ご安心を!
※防汚移染処理はご注文後の対応となります。お届けまで2週間程度頂戴いたしますので何卒ご了承くださいませ。
★防汚移染処理についてはこちらから 「鹿革(防汚移染処理)」
<顔料仕上げの鹿革>
合成樹脂の仕上げ剤を含む塗料液で革を仕上げているため、表面がコーティングされ、どのお手入れ用品を使用してもシミにはならず、質感にも変化がありませんでした。ただし、鹿革専用ワックス「Wax of the DeerSkin」を使用した箇所のみ、テカリが出て色も少し濃くなり、少しつるっとした質感に変化したように感じます。
また、素仕上げの鹿革と同じく水濡れの検証もしてみましたが、やはり表面のコーティングのおかげで水を弾き、水滴が革に染み込むこともなくシミにはなりませんでした。
ちなみに、当社で顔料仕上げの鹿革を使用した商品は、9月に発売したばかりの「IDカードケース」。
仕事中ずっと身につける人目に留まりやすいアイテムだからこそ、傷や汚れがつきにくく風合いの変化も少ない顔料仕上げの鹿革を採用いたしました。
今後も顔料仕上げの鹿革を表革に使用した商品を発売予定ですのでお楽しみに!
★商品ページはこちらから
<鹿革のIDカードケース>18色展開・価格 16,500円(税込)
以上、鹿革小物のお手入れについての検証でした。
実際に様々なお手入れクリームやワックスを使用して検証してみると、個人的には、鹿革のもっちり柔らかな質感が損なわれてしまったのが残念な気がしました。
ただ、パステルカラーや淡い色は濃い色に比べると汚れが目立ちやすく、気になる方が多いかもしれません。
鹿革の質感や風合いが変化する可能性があることをご理解のうえ、ご自身の用途に合わせてお選びくださいね。