皆様こんにちは、鞄工房山本の晴之です。
鞄工房山本はランドセルと革製品をつくる革屋さん。革を加工するための道具もたくさんあります。その中で花形の道具はやっぱりミシン。
針に糸を通して、革を縫い合わせていきます。時にはミシンを使わずに手で縫う部分も。
そんなとき!針は折れたり曲がったり、使えなくなることも少なくありません。
そんな使えなくなった針たちを供養するならわし「針供養」があること、ご存知でしたか?
事始めと事納め
2月8日と12月8日は一般的に「事八日」と呼ばれます。地域によって違いはありますが、2月8日の「事始め」と12月8日の「事納め」。
「事」とは農作業のことで、2月のこの頃に始まって12月のこの頃に終わることからそう呼ばれていました。もっとも、最近はあまり聞かない言葉かもしれません。
昔は、これら2日間はつつしみをもって過ごす日とされており、農作業や針仕事はしてはいけない、休むべきと考えられていたんですね。
そこで当時の女性は、大切な仕事である針仕事でいつもお世話になっている針に、感謝の気持ちと裁縫の上達の願いを込めて、事八日に供養したのです。
現在もその風習は各地の神社やお寺で続いています。関東では2月8日に、関西では12月8日に針供養を行うことが多いうようですが、厳密に決まっているわけではありません。
ランドセルを縫うときに折れてしまった針の一部。こんなになるまでよくがんばってくれました、ありがとう。
刺したり埋めたり流したりする針供養
どうやって針を供養するかと言うと! その方法がなかなか粋でおもしろいのです。
今までかたい革や生地に何回も何回も糸を通してきた針ですが、「最後は柔らかいところでゆっくり休んでください」という
思いとともにお豆腐やこんにゃくに刺されるのです。昔の人の優しさとものを大切にする気持ちがひしひしと伝わってきます。
そうして針山となったお豆腐やこんにゃくは、土の中に埋められたり海や川に流されたりして供養されます。
土の中に埋まっても、ゆっくりゆっくり土に還っていくので環境破壊にはならないそうな!さすがに海や川に流したりは最近は行われていなさそうです。
淡嶋神社と法輪寺
和歌山県の淡嶋神社
和歌山県和歌山市加太に針供養で有名な「淡嶋神社」がございます。
年々縫い物をする機会が減っているとはいえ、毎年全国から集まった数万本の針を供養しているこちらの神社。
関西にございますが、2月8日に針供養は行われるようです。
境内には「針塚」なるものがあり、その前で厳かに供養は行われます。たくさんの針たちは針塚に収められたのち、塩をかけられ土に埋められて供養は終了。
今までありがとうございました!「針塚」と聞くと、いつかの「財布塚」や「大めがね」を思い出しますね……
★過去のブログはこちらから
<2019年9月10日>「山本京都探訪~お世話になった小銭入れをゑびす神社で供養してみる~」
<2019年11月14日>「奈良県のいろんなお寺~眼病封じとめがね供養の壷阪寺~」
京都府の法輪寺
京都府は嵐山の中腹、「法輪寺」も針供養で有名なお寺です。
こちらでは2月8日と12月8日の2日間ともに針供養をされておられるようです。
儀式の中で大きなこんにゃくに針を刺す場面もあるようなので、ぜひ供養に参加してみてはいかがでしょうか?
芸術系の企業さまや学校さまでも針供養をおこなっているところは多いようです。
鞄工房山本もものづくりの会社ですので、ものを大切にするということの再認識のためにも、針供養をみんなでしてみたいなと思いました。
いつかそのレポートをこのブログで書けますように。