皆様こんにちは、鞄工房山本の晴之です。
前回お届けしました「レザーマニアへの道第3回その1」では、皮革の専門用語をご紹介しました。
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<2019年10月11日>「レザーマニアへの道~革屋さんが使う皮革の専門用語その1~」
「キップ」は中牛の革、「トラ」は革についたトラ模様のようなシワ、ということが分かりましたね。
本日も同じく革屋さんが使う言葉を紹介するのですが、もうちょっと1枚の革に寄って見ていきたいと思います!
さて、残る謎は「メガネ」のみ。一体何のことなのでしょうか。
革の特徴
革製品として使える「革」になる前の原皮は、大きく分けると二層に分かれています。
そのうち内側の層をタンナーさんに鞣してもらって革になるのですが、その革もまた二層構造になっているのです。
革の外側の層を「銀(ぎん)」、その表面を「銀面(ぎんめん)」、同じように、内側の層を「床(とこ)」、
その表面を「床面(とこめん)」と言います。ざっくりわかりやすく言うと、革の表が銀面で裏が床面ですね。
左側が鹿革の銀面、右側が床面。「じゃあ表と裏でええやん!」と聞こえてきそうです。
確かに多くの革製品は表に銀面を使っているのですが、スエードなどの素材は床面を毛羽立てるようにして仕上げられます。
この場合、床面が表に、銀面が裏になるんですね。中には表も裏も床面の革も……ややこしい!
革の表情をつくるシボ
銀面のシワの状態を「シボ」と言い、これによって革の表情は大きく変わります。
1枚の革でもシボの細かいところと荒いところで大きな違いがあるのです。
上はシボが細かい背中、下はシボが荒いお腹。革の部位ごとに表情が違うということは、製品になった時もパーツによってシボが異なるということ!
シボの粗さやシボが生み出す模様は1つとして同じものがないので、「お気に入りの革製品の中でも特にお気に入りのパーツ!」なんてものも見つかりそうですね!
革の持つ個性
シボ以外にも、革一枚、一部分にはそれぞれの個性があります。前回ご紹介した「トラ」もその1つ。
他にも何種類かあるので、それらをいくつかを紹介しましょう!
キズ
動物が生きていた時の怪我などの名残です。人間と同じように、擦り傷や切り傷などの様々なキズが革の表面に残ります。どうしても目立ってしまうため、
この部分は避けて裁断することが多いです。
毛穴
凹んでいて少し黒ずんだようなポツポツは動物の毛穴。ランドセルに使う革は表面をコーティングしているので見えなくなっています。
しかし、当店の鹿革はナチュラルな仕上げなので、革によっては写真のものより目立つことも。
血筋
血管の筋が強く浮き出ることもあります。これの厄介なところは、裁断の段階では目立たないものが多いこと。
気付かずに裁断してしまい、製造を進めるうちに革を折り曲げたりするとはっきり見えてくるのです。強く浮き出るものは製品には使えないのです……
色ムラ
染め上がりで色の濃淡に差ができることがあります。原因は染色のミスではなく、これも自然由来ゆえ。
なぜ色ムラが起こるかと言うと、1枚革といえども天然皮革には厚みや固さに差があるから(特に当店の鹿革などのナチュラルなもの)。その差のせいで、染まりやすさが部分によって異なってくるんですね。
できるだけ同じ色を合わせて1つの製品に仕上げますが、それがなかなか難しいのです。
焼印
動物を飼育していた所有者が、判別のための印としてつけた焼印。これはランドセル用の牛革です。
焼き印がついている部分は革の質が格段に落ちるため、まるまる使えません。なによりも、動物愛護の観点から見直しを求められており、日々改良法が考案されています。
コードバンとはなんぞや
たくさん専門用語が出てきましたが、ここで抜き打ちテストを行いたいと思います!前回と今回の内容を理解し、言葉を覚えておられる方はわかるはず!
テーマは「コードバン」。
「革のダイヤモンド」と例えられることもあるぐらい希少で上質な革、コードバンとは一体何者なのか、参りましょう!
コードバンとは、馬のバット部分を裁断し鞣した後に、銀面を削り取って採れる「コードバン層」と呼ばれる床のみを仕上げた革のことです。
半裁ではなく、バット部分を切り抜かれたかたちで仕入れるのですが、そのかたちから革屋さんの間では「メガネ」と通称されています。
大きさの個体差が激しく、デシ数での注文が難しいため1枚単位での注文がほとんどです。
1枚のメガネからランドセルのカブセが2枚とれると言われていますが、それも実は厳選されたコードバン。
その大きさで、かつ傷なく使えるものは100頭中5、6頭からしか採れないんですって。
シボのある革と比べると分かりやすいのですが、そのスムースさとツヤ感は一級品。まさに貴重さも品質もダイヤモンド級なのです。
左がコードバンで右が牛革。もちろん牛革のシボも革らしさがかっこいいのですが、コードバンの光沢も唯一無二。これは迷っちゃいます。
ちなみに、鞄工房山本で扱っているコードバンはすべて、世界的な馬革タンナーである「新喜皮革」さんで鞣されたものですよ。
さて、コードバンとは何か分かっていただけましたでしょうか。そして同時に「メガネ」の正体も判明しましたか?
わからなかったらまた前回の記事からお読み直しお願いします!
革屋さんで使う専門用語、ご存知のものもそうでないものもあったのでは。レザーマニアに向かって一歩前進したところでお別れです!
また次回のレザーマニアへの道をお楽しみに!