2019年1月19日

リュックサック

こんにちは。鞄工房山本の二見です。

厳しい寒さが続きます。奈良は盆地なので、独特の寒さです。そして本舎は木造なので、これまた独特の寒さです!
京都で築70年以上の町家に住んでいた時を思い出して、風情と思うようにしています。
上の写真は、工房の近くの立派な日本家屋で、以前お邪魔したところのお庭です。
冬にもこんな彩りが。

以前、革製品の金具の呼び名をいくつかご紹介しました。

★過去のブログはこちらから
「オリジナルビジネスバッグにまつわる、 バッグの部品の名前座学 その1」

好評につき、第2弾を。

ビジネスリュックに限らず、革製品の部品の名前座学 その2

微妙にタイトル変えていますが、続きです!ちなみにその1は、

  • ビジョー
  • カン
  • ナスカン
  • 引き手

でした。

ファスナー関連で終わっていたので、まずはその続きから。

スライダー

スライダー、って、なぜかロック関連でよく聞く言葉です。ストリート・スライダーズ。T Rex のアルバムの The Slider。いちいち古くてスミマセン。
今も20世紀を生きています。スライド・ギターからきているのか?でももしかしたら野球の球種の方を思い浮かべる方のほうが多いかも。
あるいは、デジタル機器の画面で「つるっ」といく、あれ。普通に訳すと、「滑らせるもの」です。

スライダー

日本に限らず、各国とも台座のみ(右のマル印)をスライダーという人と、引手もひっくるめて(左のマル印)言う人がいます。
そして、台座のことは cursor と呼ぶ場合もあるようです。早い話がカーソル。

話がそれますがカタカナ英語って、日本人の英語習得の足枷になっている気がします。かく言う私も、「アパレル apparel」 と
初めて本物の英語発音で聞いたときは「パー」しか聞こえませんでした。

ムシ

ムシですって!? 虫!? なんの虫!?
ムシムシムシムシうるさいな!
すみません!

本当は、ファスナー界(業界?)ではこう書くのです。「務歯」。働く歯、だったのですね。一つ一つが噛み合っているということですか。

ムシ

この一つ一つがムシです。

でも調べるまでは「虫」と思っていました。なんせ、ファスナーの長さを調節するためそれを工具で取り除くときに「ムシをとる」というので……。
あ、あっちは「虫捕り」か。ちなみに英語では本当に「歯」と同じ dent というか、element と呼ぶ人たちもいます。
フランス語でも dent または ?l?ment、イタリア語 dente(アル・デンテのデンテです)または elemento。
なので各国共通というよりも、いずれかが元になって各国語へと訳されたのでしょう。

カシメ

かしめる、という言葉を時折耳にするので、漢字でどう書くのかと思っていました。「金交る 」(なんだかこわそう)「加締める」と書いている人もいますが、
当て字っぽい。国語辞典ではひらがな表記しかでてきません。意味としては、2つ以上のものをまとめるために、はめ込んだ金具を締め、固定することです。
そして、その金具がカシメ。

カシメ

英語ではなんと rivet(リベット)でございます。これまた (FR) rivet、(IT) rivetto。発音の違いはあっても、全部一緒やんかー。つまらーん。

日本では主にデニムの服についているアレをリベットと呼んで、他の形状だとカシメと呼ぶことが多いようです。

コキ

コキは、「子機」です。「小機」ではありません。

コキコキコキコキうるさいなー!
……もうやめときます。

子機の形状によっても、いくつか種類があるみたいです。先日ぼかした画像でプレビューさせていただいたビジネスリュックについていたのもそうですが、
これはハシゴ子機。本当にハシゴみたいなカタチです。

本日ちょっと残念なのが、オリジナルリュックのサンプルが訂正のためお留守で、代わりに他のリュックの部品を撮影していることです。
「The リュック」が来るまでしばしお待ち下さい。

コキ

子機は肩紐の長さ調節に使われます。ショルダーバッグだとこちらのタイプ(送りカン、と呼ぶこともあるそうです)を使います。

コキ

ちなみに英語では adjuster、イタリア語では scorrevole。おお、全然英語と違いますね。
これを英語に直訳すると「スライディング」とあり、あれ、最初の言葉に戻った?いや、戻ってない。フランス語では passant。通すやつ、みたいな意味です。

鞄工房山本の贅沢

話はまたガラリと変わります。
私はまだ会社に入って半年立たないので、社内の行事が物珍しい。
工房の仕事始めの日は、
神社の宮司さんに来ていただいてお祓いをしてもらいました。

1/14(月)は、鏡開き。ぜんざいが振る舞われました。と、さらっと書いていますが、ここには素敵なお話が。

70人の工房スタッフの方には、ベテランもたくさん含まれます。その一人、80歳代の女性スタッフが毎年、有志を募ってぜんざいを用意してくださっているのです。
仕込みは、実は12月の28~29日に何升ものもち米からお餅を用意することに始まるそうです。一連の作業に支障が出ないように、
時期に合わせて体調も整えてくださっているとも聞きました。感謝です。出来上がったぜんざいの量、画像のお鍋に入っているのはほんの 1/4 くらい。
このお鍋(直径 36 cm)は満杯で15.5リットルなので、80%入っているとしてその4杯分は49.6リットル、東京ドームに換算すると……

まあそれは置いといて、小豆を水で戻す手間を考えただけで私なら諦めます。煮るのも、昔ながらのかまど(!)とガスコンロを総動員とか。

鍋

同僚のキティさんが対比で更に小柄に見えます。

70人分のお餅は、別のスタッフが3つのガスコンロを見張りながら、素手でひっくり返して焼き続けたそうです。ありがとうございます。
残念ながらその勇姿は画像がないのですが、お餅の焦げ方がいかにも美味しそうです。

餅

それに、年代物の木の箱に入れているのも素敵な演出です。この箱は、「ばんじゅう」と呼ばれるそうです。今やプラスチックのものしか見かけません。
鏡開きのぜんざい、みんなで美味しくいただきました。ごちそうさまでした!

ぜんざい

毎日の慌ただしい業務でも忘れることなく、昔ながらの手作業で時間をかけて行われる季節の行事、ある意味贅沢ですね。続いてほしい方の贅沢。

鞄工房山本 二見