こんにちは、革と帆布のかばん専門店 香久山鞄店スタッフのよちこです。
前回の「革ができるまで」の続編となります。続編というと映画とかでは大概ロクでもない出来ですが、ここが胸突き八丁ふんばりどころ。フッハとばかりに気合を入れて頑張りたいところであります。今回は革の染色について取材いたしました。
「さぁ、いっちょうブワーッといくか!」
革をなんとかする。
いや、なんとかするんじゃなくてプレス加工な。
鞣された革の表情をより豊かにするため、アイロンで艶をどの程度出すか、を考えているところです。職人というよりも、もはや殺し屋の目ではなかろうか。
アイロンといってもご家庭用のアイロンではなく革専用の油圧式アイロンプレスマッシーン(Press ironing machine
)というごっつスゴイ機械を使用しております。加熱した金属板で高圧プレスすることで革を平らに伸ばしたり、艶出しなどもできます。
…なぁんだやっぱりアイロンか。
そう書いてしまうと身も蓋もない話ですが、それだけじゃないんですよ。ちゃんと職人さんに話を聞いてるから。
天然の繊維構造による地シボをどう生かすか。
革の表情であるトラ筋をほぐすとどんな風合いになるのか。
ここでの一手が革の出来栄えを左右するといっても過言ではありません。将棋でゆうたら勝負手というやつ。なにより一発勝負なので気が抜けません。
使ってすぐ色移りしたんでは困るのが革の染色。
スプレーガンによる染色です。
このままでは革は素の状態のまま。クラフト感があってレザークラフトなどではわりと好まれておりますが、皮革を仕上げるプロフェッショナルだから付加価値を高めるために色を染めたり表面を特殊加工したりなど、プロはプロなりに日夜涙ぐましい努力をしているのであります。
こっちは「手汚し」による染色です。汚れてもいい。泣いてもいい。愛は尊いわ。
染色の工程では、バインダーと呼ばれる定着剤と、色をつける染料の調合がなんたって重要になってまいります。
というのも、革が本来持っている地の風合いを生かすためには、定着剤であるバインダーが少ないほうがいいにきまってる。だけど世の中そんな楽でおいしい話なんかは転がってなくて、製品として長く使用に耐えるためには染料がしっかり定着してくれないと話にならないわけです。
できました、親方。
この染料とバインダーの配合のさじ加減がきわめて難しく、革の状態、気温、湿度など様々な条件によっていちいちぶれまくるので腹が立つ。腹も立つが天地自然の理なので文句も言えず、人間様が合わせていかなければならないのであります。
染め屋さんはアイガー北壁のようにそびえ立つこの難題に、時には血まなこになって取っ掛かり、また時にはトロ眼まったり的に「冬はやっぱりコタツなのだ」とかなんとか言って取り組んでいるのかもしれない。
次回はいよいよ鞄作りの工程です。どうぞお楽しみに!