皆様こんにちは。
まだ残暑が続きそうな気配。先日〈ディア文庫〉納涼特集をお送りしましたが、本日は冒頭で涼しい画像をお見せします。
うさぎさんの水遊び?田んぼの緑も鮮やかです。
何してるのん?
鞄工房奈良本店の前庭の芝生。地面の傾斜のせいで、スプリンクラーだけでは水やりが行き届かないのです。それで、柵越の放水。消火活動ではありません。
さて、ちょっと涼しくなったところで、本日の〈ディア文庫〉はアツイ本のご紹介です。
レイ・ブラッドベリ『華氏451度』( “Fahrenheit 451” by Ray Bradbury, 1953)
アツイって、厚い本ということではございません。タイトルが高温です。
でも、どちらかというと私はこの本に流れる熱い想いのことをアツイと言いたいのです。
華氏、カシって、何?
華氏451度とは、日本で使われている摂氏(℃)で言うところの233度程度です。華氏(?)は主にアメリカやジャマイカで使われています。
いきなり華氏で温度を言われるとびっくりします。以前アメリカのドラマを見ていたら、
「ちょっと、今日も100度超えてるわよ、この暑さやってらんないわよ」ってなセリフがありましたが、摂氏だったらほんとにやってられません。やられてしまいます。
摂氏と華氏の計算方法はそれぞれこのようになっています。
- 華氏 =(摂氏温度 × 9 ÷ 5)+ 32
- 摂氏 =(華氏温度 - 32)× 5 ÷ 9
では、華氏451度=摂氏233度とは?
紙が燃え始める温度です。
舞台は「焚書」が行われる近未来
紙が燃える、といえば、〈焚書〉(ふんしょ)という恐ろしい言葉があります。焚書とは、特定の思想や信仰を弾圧するために、権力が書物を燃やすことです。
この物語では焚書が行われる近未来が描かれています。
白状すると私、この本を読んでいません。フランソワ・トリュフォーによる映画『華氏451』(1966年)を観ただけです。
単なる偶然ですが、トリュフォーの映画がこのブログで登場するのは2回目です。
今回と同じく〈ディア文庫〉で、『幻の女』を書いたウィリアム・アイリッシュの作品例として『黒衣の花嫁』(トリュフォーが1968年に映画化)にちょこっと触れました。
★過去のブログはこちらから
「眠れぬ夜と、憲法黒の鹿革ブックカバーには 黒いミステリー」
『華氏451度』のテーマ
脱線はこれくらいにして、本論にはいります。
相変わらず物語の内容は詳しく申せませんが、(映画を観た私の理解では)テーマはまず、言論・思想の自由への圧力に屈しない、というメッセージ。
もう一つのテーマは本や活字に対する愛情です。と、思っていたら、作家自身長い年月の中で解釈を変えたように言われています。
以下に英語版 Wikipedia様からの記述を日本語訳したものです:
1956年のラジオインタビューでは、当時(マッカーシズムの時代)アメリカで焚書がほのめかされていたことに対する危惧が元になってこの小説を書いた、
と語る。後年、この本について『マスメディアによって如何に文学を読むことに対する興味が薄れていくか』を説いている、と談話。
あれっ、自分で見方変えてるやん、と私も最初思ってしまいました。
ただし、よくよく調べてみるとこの「後年」というのが50年程経ってから、ということらしいのです。
彼が物語を書いた当時の意図としては確かにマッカーシズムに対する警鐘だったけれども、時代が変わって新しい読者たちは、
マスメディアによる悪影響に対するそれとしても読める、と言っていたのではないでしょうか。
マスメディア。1956年当時でいうとテレビですが、今はネットのほうがあてはまりそうです。
本を奪われ、読まなくなった人たちが考える力も記憶も失っていく、ってゾッとします。また納涼大会になってしまいます。
でもその「ゾッとする」のって、妙に腑に落ちるからゾッとするのではないでしょうか。
こんな先見の明を持っていた作家は、他にどういう本を書いているのでしょうか。
アメリカSF文学の代表的作家、レイ・ブラッドベリ
レイ・ブラッドベリ(Ray Bradbury、1920年8月22日―2012年6月5日)は、アメリカの小説家・詩人です。
怪奇ものなども書いているとのことですが、SF作品が一番有名です。代表作は他に『火星年代記』(”The Martian Chronicles”, 1950)。
私が一番初め(子供の頃)に読んだ記憶があるのは、短編集『恐竜物語』(“Dinosaur Tales”, 1983)収録の『恐竜以外に、大人になったら何になりたい?』
(“Besides A Dinosaur, Whatta Ya Wanna Be When You Grow Up?”)です。
こちらも機会があったらぜひお読み下さい。大人が読んでも楽しい本です。あ、恐竜好きなら。
出かけるのが億劫なこの季節、実は読書に適しています。エアコンで快適な室内で、「本のことを語るアツイ本」を読むというのはいかがですか。
燃えるような赤の、茜色・鹿革ブックカバーを合わせて、「本の虫」なお友達へのギフトとしてもおすすめです。