こんにちは、革と帆布のかばん専門店 香久山鞄店のスタッフよちこです。

以前のコラム記事で、レザーボディバッグの水シミを消すことに成功したのですが、(前回の記事はこちら→革の水シミ・水ぶくれを消す方法。)この記事に先立ち、じつはあるバッグの修理を承っておりました。それは、オールレザーのトートバッグ。ボディバッグよりも遥かに大きな革製品で、しかもただの水ぬれではなさそうです。

哀愁の革に水が染みる、レザートート。

オールレザートートバッグ

前回は、比較的小さな革のボディバッグだったのでわりと簡単だったのですが、今回はビッグサイズのレザートート。革製品としては超大型の部類になります。わざと濡らしたわけではなく、お客様が使用中に発生したリアルな水ぬれ事案です。お手入れの方法をお伝えしてみたのですが、実際にやるのはやっぱり難しい。結果は問わないという条件で、ひとまずバッグをお預かりすることとなりました。

オールレザートートバッグ

拡大してみました。哀愁漂う水シミです。

こちらのトートバッグは水に強いオイル加工を施した革ですから、ここまで水シミができるのは、通常ではちょっと考えにくい。ここまでのシミになってしまった状況について詳しくお客様にお伺いしたところ、バッグの中で飲み物をこぼしてしまい、濡れた部分だけを水で濡らしてはみたそうです。その後、なるべく早く乾かそうとして、ドライヤーを当てて乾燥させてしまったとのこと。がんばってみたけど、かえって水シミをひどくさせてしまったようです。私も昔、そうやってお財布をダメにしたことがありました。

オールレザートートバッグ

ヒューッ! さすがに今回ばかりは生きて帰れる気がしないぜ。

レザートートを濡らしてみる。

オールレザートートバッグ

本当はまるごと水没させたいところですが、あいにく会社内ではそんな事できやしない。仕方ないのでレザートートを横にして、水を含ませた布で濡らしていくことに。

オールレザートートバッグ

で、やってみてわかったのですが、トートバッグって大っきすぎ! しかも片面を濡らしている間に、水のしずくが裏まで垂れてしまう事が判明し、愕然となる。

オールレザートートバッグ

裏面にシミを作らないためには、両面を一気に片付けなくてはならないので、超スピードで作業してます。いまいち画像からは伝わりませんが、悠長に写真など撮っている場合ではない。奥歯のスイッチで起動する加速装置がほしいところだ!

濡らす前と濡らした後を比較してみました。

これが。

こんなふうになりました。

でも、よくみると薄っすらとシミが見えちゃってますよ。一回ではダメだったよ! この後、ひたすらトートバッグをひっくり返して水に濡らす、を繰り返しましたが、どうでもいい私の苦労話なんぞは誰も読みたくないだろうから、省略します。

続いて、革用クリームを塗り込みます。

続いて革用のクリームを塗ります。鞄/バッグ専用で、乳化性のクリームを選ぶといいんじゃないでしょうか。靴用の革クリームだと、有機溶剤の含有量が多かったり、香料がキツかったりするので止めといたほうがいいですよ。

この後、革をゆっくりと乾燥させていくのですが、濡れたままの状態で乾燥させてしまうと、革の繊維が収縮してしまいます。また、革から水分が抜けていく際に、一緒に栄養分も持ち去ってしまうため、クリームを塗って油分やミネラルなど補いをしてあげましょう。まず乾燥前にクリームを塗っておき、乾いてからもう一度塗る、という手順をオススメします。一度にたくさん塗るよりも効果があります。手間はかかりますが、こまめに塗り込むことが大切。

なるべく早く、濡れた革が乾く前に塗り込むのがベストですが、

革の表面に水気があるとクリームの成分が浸透しにくいので、湿ってるけど濡れてはいない。くらいが、ちょうどいい頃合いではないかと思われます。

仕上げに、革をしっかりと揉みほぐします。

クリームが革に馴染んだのを確認したら、仕上げに革を揉みほぐします。

水シミになった部分は念入りに。

こうして揉んで揉んで、また揉んで。そしてクリームをちょっぴり塗って、を何度か繰り返しました。

仕上げに、ゆっくりと自然乾燥。

1日目の状態は、まだ生乾き。

革にクリームを馴染ませた後、日の当たらない場所で3日ほど養生させました。直射日光は厳禁です。ドライヤーで強制乾燥してしまうと、革の中の水分が一気に失われて、シミになってしまう可能性が高いので、絶対にしないでください。

こうして

水のシミは見事に消えてなくなりました。シミが残るんじゃないかとちょっとドキドキしましたが、上手くいってよかったです。

(水シミが)あるときー

(水シミが)ないときー

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