2019年1月26日

皆様こんにちは、鞄工房山本の晴之です。
いよいよあと2日で、鞄工房山本の革製品 Web サイトのオープン予定となりました!
今から2日後が待ち遠しいのはもちろんですが、楽しみ半分不安半分。無事に何事もなくオープンしてくれることを願うばかりです。

そんな今日は、オープン前最後のお勉強をしましょう。内容は革の鞣しについて、
当店で扱う藤岡勇吉本店で鞣された鹿革を実際に見ながら学んでいこうと思います。
ブログを読み終えたときには、革について少し詳しくなっているはず。読んでいただくことで、皆様が革により興味を持ってくださっていれば大変嬉しいです。

まるまる一頭分の鹿の革を仕入れます

鞄工房山本で扱う鹿革はすべて、奈良県宇陀市の老舗鹿革タンナーである藤岡勇吉本店
から仕入れています。タンナーとは、「皮を革に加工する」鞣し(なめし)を行う業者さんのこと。
もっとわかりやすく言うと、毛や皮脂や肉のついた生の皮を加工して、革製品として使えるように(腐ったり硬化したりしないように)してくれる方々です。
我々のように「革から革製品をつくる」メーカーにとってはなくてはならない存在ですね。いつもありがとうございます!

鞣された革は、くるくる巻かれたり優しく畳まれたりしてやって来ます。それを広げると……

鹿革

鹿が大の字になっています。右が頭側、首辺りの革まで残っています。左がお尻側ですね。奥と手前は腹にあたるところ、
ベリー」と呼ばれ、見ての通りダルダルなのであまり製品には向きません。
真ん中付近の「ショルダー」や「バット」と呼ばれる部分はハリがあり、頑丈なので比較的使いやすいです。

鞄工房山本でランドセルに使用している成牛の革の場合はサイズが大きすぎるため、「半裁」という頭からお尻まで真っ二つにカットされた状態で納品されるのですが、
鹿革はサイズが小さいのでまるまる一頭分のまま入ってきます。作業台の上のハンマーと比べてみてください。
「わかりにくい!」という方のために具体的な大きさはこのぐらい!

鹿革

小さく「107」という数字と、めちゃくちゃ小さく「dm2」という単位。この単位は「平方デシメートル」と読み、「10 cm × 10 cm」の面積のことです。
日本の革の業界では省略して「デシ」と呼び、革の大きさはすべてこの「デシ」で表します。

つまりこちらの赤銅色の鹿革は「107デシ」、10 cm 四方の正方形が107個入る大きさということですね。うーん、どちらにしろわかりにくかった。

鞣し方による色の違い

当店で扱う鹿革は同じく藤岡勇吉本店で染め上げてもらっています。別注色含めて現在14色ですが、すべてが揃うとなんと18色に
色にも性格があり、鞣し方によって出せる色と出せない色があるとか。そこで、それぞれの鞣し方に対しての染色を見ていきましょう!

タンニン鞣し

鹿革
鹿革

生成り憲法黒が「タンニン鞣し」で鞣された革です。
生成りに染料は一切使用していないので、これがそのままタンニン鞣しの色、ということですね。
植物に含まれる水溶性化合物「タンニン」をベースに鞣しているから「タンニン鞣し」。そのまんまです。

タンニンを使って鞣された革を「ヌメ革」といい、その独特なエイジングが特徴です。
経年変化でどんどん手に馴染んでいくので自分だけの革に育てることができます。レザーマニアの中にも愛好家は多くいらっしゃいます。

生成りのエイジングについて、下の記事でも紹介しているので気になる方はお読みください。

★過去のブログはこちらから
「ヌメ革の名刺入れで自分にしかできないエイジングを楽しんでみる」

クローム鞣し

鹿革
鹿革

写真の月白空色若葉色菜の花色の他に薄藤色
茜色が「クローム鞣し」で鞣されています。タンニン鞣しの染料無しが「生成り」であるように、
クローム鞣しの染料無しが「月白」。鞣し方で色ってこんなにも変わるんですね。こちらはクローム系の化学薬品をベースに鞣しています。

当店でパステルカラーと呼んでいる色が主にクローム鞣しなのですが、このパステルカラー、色を出すのが非常に難しいそうです。
真っ白なキャンバスには絵を描きやすいように、ベースとなる「月白」から様々な色に染めやすいのがクローム鞣しの特徴。
そんなクローム鞣しでも、鞄工房山本が藤岡勇吉本店にお願いした色合いは絶妙な難しさだったそうです。本当にありがとうございます!

ちなみにタンニン鞣しとクローム鞣し、同じ鹿革で手触りが違うのも見どころの一つですよ。

コンビネーション鞣し

鹿革
鹿革

写真の黄金色焦がれ色千歳緑紫根
そして紺藍赤銅色、それらが「コンビネーション鞣し」もしくは「混合鞣し」と
呼ばれる方法で鞣された革たち。コンビネーション鞣しは、いわばタンニン鞣しとクローム鞣しのいいとこ取りです。
藤岡勇吉本店の場合はタンニン鞣しをベースにしています。

いいとこ取りのコンビネーション鞣しがあるのに、タンニン鞣し・クローム鞣しのそれぞれでしか出せない味があるというのも鞣しの奥深さ。
簡単な世界ではありません。


以上、革の鞣し方の種類についての説明でした。実際に革がどう鞣されていくかについては、
ピット鞣し」や「ドラム鞣し」などいくつかの手法があるのですが、
それはまたいつかの「レザーマニアへの道」でお話ししましょう。次回は完全に未定です!

普段生活する中で、一枚の革をまるまる見る機会はそうあるものではないと思います。
この革たちが裁断や縫製などの工程を経て、名刺入れやお財布になっていきます。それを皆様のお手元に届けるため、

鞄工房山本 晴之